公開日:2025年11月
最終更新:2025年11月
日本製CONTAX開発秘話 ― 京セラが継いだ夢

日本製CONTAX開発秘話 ― 京セラが継いだ夢
1. はじめに ― ドイツから日本へ受け継がれた炎
CONTAXという名前には、ドイツ光学の誇りとZeissレンズの哲学が宿っています。 しかし1980年代以降、その名機を作り続けたのは日本の京セラでした。 「なぜ京セラがCONTAXを作っていたのか?」 「日本製になってどう変わったのか?」 本記事では、その歴史と知られざる開発の裏側に迫ります。
2. CONTAX製造の“継承者”として京セラが選ばれた理由
1970年代後半、ドイツ本国のカメラ事業は採算面で厳しい状況にあり、 Zeissは“レンズ設計に専念する道”を選択します。 そこで生まれたのが、Kyocera(京セラ)との協業でした。
- 精密加工技術が高く、品質に妥協しない日本企業だった
- 電子技術を取り入れた新時代のカメラ開発に対応可能だった
- Zeissと対等に技術議論できるレベルの製造力を持っていた
Zeissは「ただのOEMではなく、思想を理解してくれるメーカー」を求めていたと言われています。 京セラはその理想に最も近かったのです。
3. 京セラの開発陣が語った“Zeissと仕事をする緊張感”
実は当時の京セラ開発者たちは、 “Zeissの名前を背負う重圧”を強烈に感じていたと語っています。
彼らがよく言っていたのは、
「Zeissレンズの足を引っ張るボディは作れない。」
そのため、ボディの剛性・ファインダー精度・シャッター耐久性など、 あらゆる点でドイツ基準を上回る水準を目指しました。 京セラの技術者たちは、常にZeissのレンズ設計者たちと議論を重ね、 “Zeiss描写を最大限に活かすボディ”を開発していったのです。
4. RTSシリーズが象徴する「日本の技術 × ドイツの思想」
日本製CONTAXを象徴するのがRTSシリーズです。 RTS、RTS II、RTS IIIと続くこのシリーズは、 設計思想はZeiss、機械・電子技術は京セラという 究極のハイブリッドシステムでした。
- RTS:プロ仕様の電子制御一眼レフの先駆け
- RTS II:クォーツ制御で正確性が飛躍的向上
- RTS III:真空圧着バックという革新的技術を搭載
特にRTS IIIは「日本メーカーでなければ実現不可能だった」と言われ、 “日本製CONTAXの到達点”として今も高く評価されています。
5. Tシリーズの誕生 ― 京セラが世界を驚かせた瞬間
1980年代後半、京セラはZeissと共に新しい挑戦を始めます。 それがTシリーズ(T2・T3)に代表される高級コンパクト路線でした。
当時の日本では「コンパクトカメラ=入門機」というイメージがありましたが、 京セラはそれを覆し、 “高級コンパクト”というジャンルを世界で初めて確立します。
- 金属外装による高い質感
- 静かで正確なシャッター
- Zeiss Sonnarレンズの圧倒的描写
結果としてT2・T3はプロにも愛用され、 日本製CONTAXの名を一気に世界へ広げたのです。
6. Gシリーズ ― “Zeiss AFレンズ”という新たな挑戦
次の挑戦はGシリーズ(G1・G2)でした。 これまでMF主体だったZeissレンズを、 世界最高レベルのAFシステムと組み合わせる── これは非常に難易度の高いプロジェクトでした。
- AFとZeissの光学設計の両立
- 電子制御と機械精度の融合
- コンパクトレンジファインダーの新ジャンル開拓
開発陣は「Zeissの描写を損なわないAF」を実現するために、 何度もレンズ設計とボディ制御をやり直したと言われています。 その結果完成したG2は、 “世界で最も完成度の高いレンジファインダーAF”と称されました。
7. 京セラがCONTAXに込めた“静かな誇り”
2005年、京セラはカメラ事業から撤退し、CONTAXの歴史は終わりを迎えました。 しかし当時の技術者たちは、口を揃えてこう言います。
「CONTAXという名を汚す仕事だけはしたくなかった。」 「Zeissのレンズが最高に輝くボディを作りたかった。」
京セラは“儲け”ではなく、 “思想を継ぐこと”に重きを置いてCONTAXを作り続けていました。 それがユーザーにも伝わり、 現代でも中古市場で高い評価を受けているのです。
8. まとめ ― CONTAXは日本とドイツが作り上げた奇跡
CONTAXの歴史は、単なるブランドの移行ではありません。 ドイツのZeissが作った写りの哲学を、 日本の京セラが技術と情熱で磨き上げた、 国境を越えた共同作品です。
CONTAXが“特別なカメラ”として今も愛される理由は、 その裏に真剣にものづくりに向き合った技術者たちの物語があるからなのです。
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