公開日:2025年11月
最終更新:2025年11月
Zeiss × 京セラ ― レンズ開発と描写哲学の裏側

Zeiss × 京セラ ― レンズ開発と描写哲学の裏側
1. はじめに ― CONTAXを特別にした「二つの魂」
CONTAXの魅力は、ドイツ・Zeissの圧倒的な光学性能と、 日本・京セラの精密機械技術が融合したことで生まれました。 どちらか一方では成立しなかった“奇跡のバランス”。 本記事では、Zeiss×京セラがどのようにレンズ開発を行っていたのか、 その裏側の哲学と情熱に迫ります。
2. Zeissが守り続けた「レンズ描写の哲学」
Zeissは100年以上にわたり、レンズ設計において絶対に譲らない原則を持っています。 それが以下の3つの哲学です。
- ① 光学的に正確であること
歪曲・収差・フレアを徹底的に抑える。 - ② 階調と立体感を損なわないこと
“3D pop”を生む自然なコントラスト。 - ③ 被写体と背景の分離を美しく描くこと
PlanarやSonnarに象徴される独特の空気感。
Zeissは「数字では測れない写り」を重視し、 人間の視覚に近い自然さを目指しつつも、 透明感・深いコントラスト・空気を写す描写を追求してきました。
3. 京セラの使命 ― Zeissの描写を“正確に再現できる”ボディ
Zeissのレンズは精密すぎるがゆえに、 ボディ側のズレや個体差が写りに直結するという性質がありました。 そのため京セラは、Zeissの性能を最大限引き出すために以下を徹底します。
- ファインダー精度の徹底 → ピント精度誤差が許されないため、測距制度を極限まで向上。
- マウント・フランジの高剛性化 → ミクロン単位のズレが描写に影響するため、高強度の金属加工を採用。
- ボディの共振を抑える構造 → シャッター衝撃が少しでもズレを生むため、内部フレームを強化。
- 電子制御の精度向上 → GシリーズのAF制御は、Zeiss光学に合わせ専用チューン。
京セラの開発陣は 「Zeissを載せる以上、ボディの精度は他社の2倍必要」 という覚悟で作っていたことが記録に残っています。
4. 共同開発の舞台裏 ― “妥協を許さない両者の会議”
Zeissと京セラの開発ミーティングは、 しばしば数時間〜数十時間に及ぶ議論が行われていたと言われています。
「この描写がZeissらしいか?」 「この制御でZeissの意図したコントラストが出せるか?」
Zeissは光学的妥協を許さず、 京セラはその要求に応えるため、 電子制御・機械精度・耐久性を徹底的に追求しました。 その結果生まれたのが、 G Planar 45mm F2、Biogon 28mm、Sonnar 90mmなどの名玉たちです。
5. Planar・Sonnar・Biogon ― Zeissの“性格”が見える三本柱
Zeissはレンズごとに目的を明確にし、性格を与えていました。
■ Planar ― ニュートラルでありながら圧倒的に立体的
Planarは「真実を写すレンズ」。 色は濃すぎず、階調は深い。 その代わりに空気まで写る透明感が特徴です。
■ Sonnar ― 柔らかいボケと美しいハイライト
中望遠では特に絶賛される描写。 ポートレート向けの優しい光の滲みが魅力で、 Tシリーズでも採用され続けた伝統的設計です。
■ Biogon ― 歪まない広角という芸術
とにかく歪みを嫌うZeissの象徴。 “ここまで直線が正確に写る広角は珍しい”と言われるほど。 建築やスナップに圧倒的な相性を発揮しました。
6. 京セラが実現した「ZeissらしいAF」 ― Gシリーズの革命
AFレンズに切り替えるにあたり、 Zeissは「描写を変えるくらいならAF化しない」という姿勢を貫きました。 そこで京セラは、Zeissのレンズ特性に合わせた専用AFチューンを開発します。
- ピント面の鋭さを損なわない駆動制御
- 前後ブレを抑える正確な行程計算
- レンズごとに異なる収差補正に合わせたAFアルゴリズム
その結果完成したG2は、 “世界最高のレンジファインダーAF”と呼ばれるようになりました。
7. Zeiss × 京セラが生んだ唯一無二の写り
Zeissの思想と京セラの技術が融合したことで、 CONTAXの写真には3つの特徴が宿っています。
- ① 空気を感じる透明感
- ② 深く濃いコントラストと階調
- ③ 被写体が浮き上がる立体感
これらの要素は、デジタルでは完全に再現できないと言われ、 今もZeiss × CONTAXの写りが愛され続ける理由となっています。
8. まとめ ― CONTAXの写りは「技術者たちの情熱そのもの」
Zeissの光学思想、京セラの製造技術。 どちらか一方が欠けても、CONTAXの写りには到達できませんでした。 妥協なく議論し、互いの強みだけを持ち寄った結果、 Gシリーズ・Tシリーズ・C/Yシリーズは 歴史に残る名機として今も語り継がれています。
CONTAXの写真が“美しい”と言われるのは、 技術だけでなく、職人と技術者たちの信念が写っているからなのです。
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